蚕姫

これは2004年の2月頃から撮影を開始している。
途中モデル嬢が鬱となった為、9月から11月頃に再開と日誌に書いてある。

この2004年の2月の日誌はかなり自分自身も鬱状態にあるようだった。
欧州からの初の写真集に関する諸々の法的なことや契約に関して頭を悩ませていた。
2月だというのに山へ釣りに矢鱈と行っている。
同時にかなり焦るように作品を撮りまくっていた。

制作時期は2月から11月頃となる。
下に雑誌掲載時の文章を記しておく。

画像は一部フラッシュにてアップ。デジタル処理をしているが、元はモノクローム写真に着色。

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蚕から糸が取れるのは年三度。春は春蚕、夏は夏蚕、秋は秋蚕と呼ぶのでございます。
前の年の秋蚕が評判になったこの村に、お館様がお見えになったのは、春蚕を前にした早春の事でございました。
お館様は庄屋様が生糸の作量を増やす事を拒まれご立腹なされていました。
奥座敷に通されても苛立たれておられましたが、不意にカタコトと糸を紡ぐ音がしてこれに耳を傾けられました。
その音は廊下の突き当たりの離れの間から聞こえて来たのでございます。
しとしとと春先に降る雨の所為か、何処か湿った音に聞こえたそうでございます。
女でも居ればからかってやろうと音のする部屋の前に来ると、すーっと襖を開らかれ、そっと中を覗かれました。

部屋は生糸で埋め尽くされていて、片隅では娘がひとり糸を紡いでおりました。その気色は蒼白でございますが、なんとも美しく儚げでございました。
この娘は去年の秋口に村はずれの森で足を痛めていたところを拾われました。身寄りもなく屋敷で世話をしていたところ、娘の紡ぐ糸が評判を集めたそうでございます。
お館様はこの娘にすぐさまご執着なされたようで食い入る様に覗かれていました。
娘は一本一本生糸をその細い指で解し丁寧に紡いでいました。しかし暫らくすると、娘の体に異変が生じました。
息が荒くなり、身悶え出すと娘はやおら着物の裾をたくし上げ、四つ這いになり尻を高く突き上げたのでございます。
そして息み出しますと、娘の秘所から白いものがほとばり出しました。お館様は放尿でもしているのかと動揺なされ目を凝らされました。
よく見ると何と生糸を割れ目から吐き出しているのでございます。
その美しい尻とその中心からほとばしるものを見ているとお館様の心は掻き乱れ、思わず部屋に乱入なされ、驚く娘を縛り上げてしまいました。
股をこじ開ける様に足を開かせ縛ると、割れ目からチョロチョロと見え隠れする生糸を引き出し、ご自分の一物をお入れになりました。ぐちゅぐちゅと一物で掻き回していると娘の割れ目から血が一筋流れました。しかしその血と見えていたのは赤い糸でございました。糸はお館様の体を這い徐々に取り巻き出しました。
半狂乱の様のお館様が夢中で行為に及んでいる隙に血のような糸は全身を覆い尽し、やがて大きく真っ赤な繭玉がゴロリと転がりました。
庄屋様が騒ぎを聞き駆け付けた時には、赤い繭玉と見たこともない様な大きな蚕の屍骸が在りました。赤い繭玉を割ると狂死したお館様が現われたという事でございます。

この話は一部始終を見ていた下男から聞き及んだ事で、真偽の程は定かではございません。
陵辱された美しい娘が蚕の姫様の化身だったと村人は噂しました。巨大な蚕の亡骸は村はずれに埋められました。そして蚕塚という石碑がその話を伝えているのでございます。


 

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