昔、気位の高きよがらぬと噂の花魁の元、寒村より娘、かむろとして入る。
件の花魁、田舎娘の所作に苛立ち覚え事ある毎に折檻す。
娘、泣き濡れて持参したる郷里のこけしとたわむるも年月が経ち、いづれ年頃となりて知恵も力も備われり。
ある夜、娘、丘引きと通じる花魁を盗み見る。叶わぬ恋を他言されたくなくばと、これまでの恨みつらみを責立てる。
娘、花魁を縄で縛り上げるも、ぬるい縄と鼻で笑われ、馬乗りになりて責めるもキセルをふかされ涼しげなり。
業を煮やした娘、遊びなれた真太きこけしを持ち出せば、花魁の割れ目に押し当てり。
「この太きを入れるぞえ」
脅すも一瞥食らわしキセルをふかす。
怒髪天についた娘は力任せにこけしを割れ目にねじ込みて、あまつさえ大いにねじる。
こけしねじれば肉壷もねじれ、ズイキの涙が流れ出づ。
泣けない女の代わりにと、こけしが鳴きますきゅっきゅっと。
「泣かぬこけしが鳴きやる」
娘、呟きて脅え泣きながら郷里へと足抜けす。
誇り高き花魁ゆえ、よがりも悲鳴もこけしに語らすなりと云う。
この後、首を回すと音を出すこけし、世に広まれり。
このこけし「鳴子こけし」と云う。かむろ娘が村のこけしと聞くも、事の真偽は定かではなし。